多様な自分を受け入れる
…東日本大震災の直後に私は鬱病と診断された。鬱の自分と躁の自分の落差が激しくどちらが本当の自分なのか悩むようになった。しかし、自分という一つの体の中に、多様な自分がいてもいいと認められるようになったとき、生き方を掴めた気がした。病気は結論を急がず調子のいい自分も悪い自分も受け入れることの大切さを教えてくれた。この経験をアートにし、「異質なものを認める寛容さの重要性」を伝えたい。

震災とコロナが加速させた分断
…震災後、私の精神だけでなく社会の二極化も深刻になった。世の中が複雑に進化する一方で価値観の多様性を認められず対立するニュースが増えている。昨年から流行し始めた新型コロナウイルスは、目には見えない格差や分断を炙り出し、議論を起こしている。「自分と異なる立場や考えに直面したときに、人はどう生きるべきか」考えたい。

真逆の要素を同居させるフルイドアート
…フルイドアートはアクリル絵具、ポーリングメディウム、シリコンオイル、水を混ぜた絵具を支持体に流して描画する技法である。支持体を傾けて流れて作られた模様は地震に揺られながら生きる私たちの姿のように見える。色相環で真逆に位置する補色の絵具は人間関係のようにグラデーションや境界線を作りながら、バランスの象徴である「0(ゼロ)」を描いている。絵画を構成するための計算はされつつ流れる絵具は、思いもよらない偶然の模様を生み出す。水と油/混沌と調和/補色/意識と無意識など「相反する要素が共存する作品」は、鬱と躁という矛盾を抱えたまま生きる私自身の姿であり、異なる性質を持つものが共生する社会の在り方を表している。